タイトル | 君は、風に還る 第二部 第三章 ―籠る糸とほどける声― | ||||
タグ | *君は、風に還る *アラクネ *モンスター娘 | ||||
コメント | 森を歩く道は、しだいに狭く、暗く、湿ってゆく。 空は厚い雲に覆われ、風も通らぬ木々の合間から、ぼんやりと薄明かりが差し込んでいた。 ぬかるんだ地面に、飛鳥(あすか)は小さな鳥の足で慎重に足を運ぶ。翼は肩にすぼめ、息を整えながら、二人の背を追っていた。 先頭を行くのは、狐面の巫女——九重(ここのえ)。 そのすぐ後ろを、紫がかった乱れ髪の少女——ロメラが、ギターを背負って、ぶつくさと文句を言っている。 「ったく、どこまで歩かせんだよ……オレ、meltin’ out here.(ここで溶けちまうぞ)」 「まあまあ。腐りん坊さんが溶けても、拾い上げる手間が省けて、よろしおすなぁ」 九重は、扇子をあおぎながら、悪びれもせずにそう言った。 「Ha ha. Very funny.(うけるわー)」 ロメラがむすっとした顔で、肩のギターを背負い直す。 そんなふたりのやりとりを、飛鳥は少し後ろから見守っていた。濡れた枝をよけるように鳥脚で歩きながら、思わず、くすりと笑みをこぼす。 (……こうして歩くの、悪くないな) ——こうして、三人で歩いているだけなのに、どこか、胸があたたかくなる気がした。 それでも、空気は重かった。木々の影は濃く、陽は差しているはずなのに、薄暗さが肌にまとわりつくようだ。 ふと、九重が足を止めた。 |
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iコード | i972264 | 掲載日 | 2025年 06月 02日 (月) 22時 20分 08秒 | ||
ジャンル | 写真 | 形式 | JPG | 画像サイズ | 3603×4563 |
ファイルサイズ | 1,275,394 byte |
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