君は、風に還る 第二部 第三章 ―籠る糸とほどける声― お気に入り画像登録
君は、風に還る 第二部 第三章 ―籠る糸とほどける声―

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投稿日時
2025-06-02 22:13:17

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矢崎 那央

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森を歩く道は、しだいに狭く、暗く、湿ってゆく。

空は厚い雲に覆われ、風も通らぬ木々の合間から、ぼんやりと薄明かりが差し込んでいた。
ぬかるんだ地面に、飛鳥(あすか)は小さな鳥の足で慎重に足を運ぶ。翼は肩にすぼめ、息を整えながら、二人の背を追っていた。

先頭を行くのは、狐面の巫女——九重(ここのえ)。
そのすぐ後ろを、紫がかった乱れ髪の少女——ロメラが、ギターを背負って、ぶつくさと文句を言っている。

「ったく、どこまで歩かせんだよ……オレ、meltin’ out here.(ここで溶けちまうぞ)」

「まあまあ。腐りん坊さんが溶けても、拾い上げる手間が省けて、よろしおすなぁ」

九重は、扇子をあおぎながら、悪びれもせずにそう言った。

「Ha ha. Very funny.(うけるわー)」

ロメラがむすっとした顔で、肩のギターを背負い直す。

そんなふたりのやりとりを、飛鳥は少し後ろから見守っていた。濡れた枝をよけるように鳥脚で歩きながら、思わず、くすりと笑みをこぼす。

(……こうして歩くの、悪くないな)

——こうして、三人で歩いているだけなのに、どこか、胸があたたかくなる気がした。

それでも、空気は重かった。木々の影は濃く、陽は差しているはずなのに、薄暗さが肌にまとわりつくようだ。

ふと、九重が足を止めた。
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